CSRブログ

CSR戦略の方程式

第76回[CSR−企業の強欲さが人間の尊厳を損う紛争ダイヤモンド]09・11・6

シエラレオーネはイギリスの旧基植民地である。1961年に独立したが、約10年近く続いた内戦により、世界で最も平均寿命が短い国のひとつとなった。

シェラレオーネはダイヤモンドの鉱石が見つかるまでは、豊かな農業国であった。1930年代にダイヤモンドが採掘され始めると、ダイヤモンドの利権をめぐり、政府軍と反政府軍の内戦が行われ、国内は疲弊し、失業率80%の世界一貧しい国になってしまった。「汗水を流して得られる幸せがいかに重要かを教えてくれる」。

反政府軍は、同国の東部、リベリアの近くで採れるダイヤモンドを売却し資金を得て、それで武器を購入しているといわれる。このように紛争地帯で採掘され、武器の購入や強権政治を支える基礎になっているようなダイヤを「紛争ダイヤモンド」という。反政府ゲリラにより、10年間の内戦で5万人以上が殺害され、何千もの人々が手足を切断され、人権侵害に苦しみ、100万人以上もの難民が発生した。このようなことは、シエラレオーネだけでなく、リベリア、アンゴラ、コンゴ民主共和国などでも起きているのだ。アフリカには人間の尊厳が損なわれている国がいまだに多い。数百年にわたりアフリカは,欧米商人の強欲の犠牲となってきた。

ダイヤモンドに関連する紛争を解決するために、これらの地域で産出したダイヤは売買させず、市場から閉め出そうという「キンバリープロセス」が発効している。しかし、これが十分に成果をあげていない。反政府軍を隣国のリベリアが支援し、国際ダイヤモンドのシンジケートが複雑にからみ国民は疲弊しきっている。

これらの紛争の裏において旧宗主国や欧米諸国企業の強欲な利益争奪の戦い繰り広げられている。このような醜いものを排除しない限り、同様なことはあちこちで続くことになる。

関係各国のNGOは他国の人権問題を言う前に自国の関係者や企業が起こしている醜い利益のむさぼりを人間の尊厳の立場から解決すべきだと思う。持続的な人間の強欲さが人間の尊厳までを損なうことは許しがたい。この種の企業には企業の社会的責任がまったくないのだ。

第75回[CSR−人権のことを言う人たちの過去の行動]09・10・31

欧米では日本人が想像する以上に人権問題にはうるさい。米国ではアフリカからつれてこられた奴隷の解放がリンカーにより行われたことは小学生の時に学んだ。黒人大統領が誕生したとはいえ、米国では強い差別がいまだにしてある。レストランでの白人とそれ以外の人種との入り口も座る席も違うということが、日本人を驚かせ、屈辱を味あわせられる。
米国は自由であるが、人の差別も自由であるようだ。それでいて人権のことを口やかましくいう。口やかましい人たちは、当然人権問題に敏感で、人間の尊重を唱える人たちだ。

多様性民族国家である米国は、日本と比べるとさまざまな差別を感じる。口では男女同権を唱えるけれども、財布の紐は亭主が握っている。日本は主婦が握る傾向が強い。

ヨーロッパは人間の尊厳や人権のことをうるさく言う。しかし、近世から近代までは、アフリカの人々を奴隷としてビジネスの対象としたり、産物や天然資源を略奪したり、殺戮も行ってきた。15世紀に活躍したバスコ・ダ・ガマは産物・財宝の略奪と殺戮を行っている。その対象になった地域はアフリカであり、インドなどである。

大英博物館には、各国から簒奪した、史跡・遺跡・宝物がたくさん展示されている。私は、飛行機に乗り遅れるぐらいこの博物館に取り付かれ、複雑な気持ちになった。なぜこれらが返されないで展示されているのだろうと。かなりの人の犠牲の上でここに展示されていることを意識せずにはおられない。

アフリカ人の人権損害は未だに続いている。その影には宗主国のビジネスが絡んでいることが多い。人権問題は、このような地域やこれを行っている企業やその企業が存在する国に向けられるべきで、これに関係する企業や国の責任は非常に重いものがある。

第74回[CSR−生物多様性への企業の社会的責任]09・10・23

企業は生態系の中で、生態系のさまざまなサービスを受けてビジネスを行っている。生態系のサービスとは地球と地球環境の自然から受けるさまざまなサービスや利便性の享受をいう。森林から受けるおいしい空気、森林の保水による洪水の防止、太陽エネルギー、温泉や水、天然資源、野菜や果樹の供給など数え切れないほどである。エネルギー源をたどれば太陽エネルギーの蓄積と化石化で、そのエネルギーを使用して産業を盛んにしてきた。

生態系のサービスはあまりも身近過ぎてありがたみがわかないし空気のようで、人間の意識の外にある。しかし、人間の行う企業活動はすべて生態系のサービスの恩恵を受けて行われている。人間と生態系の抱える問題が地球環境保全である。温暖化防止、有害物質の排除、天然資源の有効使用などである。その中で最大の問題が気候変動、温暖化問題である。これによりどのような問題が起きるのか予想できないことが多い。 

世界には現在約3,000万種以上の生物種が存在するといわれ、われわれ人類はさまざまな恵みを享受している。それは森林や海の藻などによるCO2吸収など人間が生存する基盤の支え、自然災害の防止など多岐にわたる。しかし、人類による大規模開発や環境汚染により、地球上の生物種は毎年約4万種が絶滅しているといわれている。そのため、国連をはじめ世界規模で生物多様性に対する取り組みが進められている。

 環境経営を行っている日本の代表的な経営者は「あらゆるビジネスは生態系の中で行われているので、地球環境保全は重要である。これが崩れると企業の持続性などありえない」といったが、優秀な経営者の社会的責任への意見は重みのあるものだ。来年は名古屋で「生物多様性に関する国際会議」が開催される。

このような動きに反応し、リコーグループは「リコーグループ生物多様性方針」を制定した。また「ビジネスと生物多様性に関するイニシアティブ リーダーシップ宣言」に署名をする日本企業もある。リコーグループでは、企業の事業活動は生物多様性の恩恵に依存するとともに、さまざまな影響を与えているとの認識を持っている。この影響を削減するとともに、生物多様性を保全することを使命とする考えから、この方針をまとめた。

内容は8項目あり、前半は、「経営の課題」「影響の把握と削減」「進め方」「技術開発の促進」。原材料調達を含む事業活動における生物多様性への影響評価、把握、分析、数値目標化を行って削減に努めることや、生態系の仕組みや生物の成り立ちに学んで知恵を生かした技術開発を推進することなどを挙げている。

 このように企業の社会的責任は、地球環境へより具体的な行動で示し時代となってきた。

第73回[CSR−米国でトヨタに何が起こっているのか]09・10・16

最近米国でのトヨタに予期せぬことが続いて起こっている。何が起こっているのか、その理由背景について述べてみたい。私は、トヨタが絶頂期の時になぜトヨタはこのように強くなることができたのか、それは「トヨタが企業理念に基づき,CSR戦略に沿った経営を行ってきたからだ」と述べ、それを「トヨタのCSR戦略」(2006年、生産性出版)として出版した。まだこの時は,GMが世界一であったが、トヨタが世界一になるのは時間の問題と見られていた。2007年にトヨタは世界一となったが、2008年はサブプライムローンの証券化の破綻で、トヨタの販売は7割も減り、傷ついた世界一であった。米国ではトヨタはトップメーカーとなった。しかし、絶頂期にいつ戻れるか分からない、苦悩の日々が続いている。

 このような時に問題が立て続けに起こった。フロアマットがずれて、アクセルペダルに引っかかり危険だとされる問題の急浮上だ。トヨタは380万台の所有者にマットの取り外しを求めると同時に米国道路交通安全局に報告をした。トヨタは、現時点では車輌自体の欠陥と考えていないので、法的なリコールとは違うと考えているが、既に4人が死亡した事故につながった可能性があり、当局により異例の呼びかけを強いられた。対象車種はカムリやプリウス、レクサスなど7車種だ。リコールは通常、回収、無償修理を伴うが、今回は「運転席のマットを取り外す」呼びかけにとどめている。
豊田章男社長が「4人の方が亡くなり残念だ」と言ったら、「過失を認めた」とニューヨークタイムズ紙は報じた。他の米国メディアも「トヨタは2年前から危険を認識していた」と非難している。

 もうひとつは特許問題だ。米国際貿易委員会はトヨタ車の一部のハイブリッド車種や部品について、米国企業が自社特許侵害を理由に輸入と米国内販売の差し止めを求めての訴えを受け、関税法337条に基づく調査を開始すると発表した。
 このほかトヨタはピックアップトラックの車体フレームに問題がないかの調査をされると発表された。

 品質が高いといわれたトヨタ社がなぜ品質問題でこのように当局から指摘されるのか、「これはナンバー1」として狙い撃ちされているという見方ができる。これは米国ではよくあることだ。不思議なのは、フォードがこの数日後に450万台の空前のリコールが発表された。フォードのリコールを希釈するようなトヨタの追求のようにも思われる。

 特許問題は、特許トロールビジネスにはめられた感じがする。それは、プリウスに代表されるハイブリッドカーが米国で浸透した頃を狙った特許侵害訴訟のような気がする。トヨタ側も、これに対抗するには、人もカネもかかる。そのためこのような訴訟の時にかなりの企業は、手打ちをして、金で解決するということになる。これが特許トロールビジネスであり、関連の特許を買いあさり、突然襲うビジネスで、日本企業はこれに弱い。
 企業を守るためにはあらゆる危機に対応できる日ごろの準備が必要とされる。それではじめて企業の社会的責任が果たせることになる。
 特許トロール:自らが保有する特許権を侵害している疑いのある者(主にハイテク大企業)を見つけ出し、それらの者に特許権を行使して巨額の賠償金やライセンス料を得ようとするが自らは当該特許に基づく製品を製造したりサービスを提供してしない者を指す英語の蔑称。

第72回[CSR−やはり問題は経営者にあったJR西日本]09・10・9

1ヶ月前のブログ、第66回[CSR−企業風土の劣化は社会的責任の遂行を妨げる]でJR西日本社員の理解しがたい行動を述べて、「JR西日本の社内の風土はどうしようもなく劣化していることを示す事件が連続して起こっている。どのようにしたらこのような企業ができるのか。研究材料としては魅力的だ。」と言ったが、企業風土の劣化の原因は役員、経営者たちの浮世離れした、倫理観の欠如、社会道義のなさがもたらしたものであることが明らかになった。どこまで不祥事をやり恥をかけばこの会社はことの重大さに気がつくのであろうか。
 JR福知山線脱線事故の調査報告書案を、航空・鉄道事故調査委員会の山口浩一・元委員がJR西日本の山崎正夫前社長に漏えいしていた問題で、国鉄OBの別の事故調元委員が、後輩のJR西幹部の求めに応じ報告書公表前に複数回会っていたことが判明した。
 この事件は、事故でなくなられた遺族の気持ちを逆なでする行為であり、常識はずれであるといえる。
 「組織の人間ならどういう情報か知りたくなるのは当然だ」という愚かなことを言う者もいるようだが、まともな経営者や役員ならこのようなばかげた判断と行動はとらない。それだけ判断力が狂っているとしか言いようがない。どのように教育されるとこのようになるのであろうか。もうこの企業は人格の高い経営者を外部から連れてこないと立ち直れないのではないか。企業の社会的責任以前の問題が企業風土として漂っている。企業文化の荒廃は社会も企業もおかしくしてしまう。

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